定年した両親がブログを始めました。
ゴールデンウィークを利用して、定年退職した両親のブログ開設を手伝ってきました。
「え?ホームページを作りたい??」
1年ほど前、定年して嘱託となった父が「ホームページをやりたい」と言い始めた。よくよく聞いてみると、母親が作っているステンドグラスは「たいへん素晴らしい」ので、それをホームページで紹介したい、と。
母親がステンドグラスを始めたのは15年ほど前。母親はフルタイムで仕事をしており、余暇として(それほど暇でもなかったはずなのだが)の趣味という感じで始めたのだが、これがハマった模様。当時、学生だった自分、このステンドグラス制作作業というものは、なにかと騒音を発することもあり、この趣味のことをあまり良くは思ってなかった。ガラスを割るときのカンカン!という音や、ガラスを削るときのガガガガーー!という音が、かなりうるさかった。音量的には、隣の家が工事中、くらいのレベル。試験シーズン、受験シーズンには勘弁、である。ステンドグラス=うるさい、というのが自分の中のイメージ。(どんな趣味であれ、自分のオカンの趣味のことを、良いと感じている人は多くはないだろう、とは思う。)
この15年の間、仕事やら人生のイベントやらで、少し離れた時期もあったりしたけど、ほそぼそと続けながら、市民展とかユザワヤとかの作品展で発表するなどしていた。
それが、5年前に仕事を辞めたタイミングで、ちょっと本格的にやろうかなと、ステンドグラスの作業用に実家のひと部屋を(結婚して家を出たあとの自分の部屋を)こんな感じにしてしまった。
実母の作業部屋(元おれの部屋)
個展とか自腹ながらも開き始めて、おぉ…こりゃ本気だな、とこちらも思わざるを得なくなってきた頃、それが1 年前。この頃から「ホームページをやりたい」と言い出したように思う。
まぁ、いわゆる「パソコンに詳しい息子」に親家族がいろいろ言ってくるのは、IT系の仕事を持つ人には定番の話だと思うのだけど、こっちも他にやりたいことがあったりして、何となくはぐらかしてた。
それが、とある日、父親からこんな携帯メールが送られてきた。
『ホームページの本を買いました。題は「10分でできるホームページ」です。いよいよです。』
やばいこれはやばい、行かないとまずい気がする、というか今どきホームページって言うのかな、いつの本だよ、やばいやばい、と、こちらも本腰を入れて実家に出向く覚悟を決めた。
ブログを始める前に
-- まずは、書きたいことの確認
父親に「ホームページ作って何したいの?」と聞いてみたところ、返ってきた言葉。要約するとこんな感じだった。
『お母さんの作ったステンドグラスの写真と、作品にかけたエピソードとかを綴りたい。広く多くの人に見て欲しい訳じゃないけど、ステンドグラスって素敵だな、って思ってもらえたら嬉しい。本当は本を出したいんだけど、お金掛かるからね(笑)』
-- 次は、ITスキルの確認
気になる父親のITスキルはこんな感じ。
- ワープロ歴20年超(人差し指カナ打ち)
- 一太郎だれも使わなくなったから…エクセルとワードがんばるよ
- ついこの間まで携帯のメモリは使わず、紙の電話帳を持ち歩いていた
- インターネットやってるよ(検索できるよ)
- ネットショッピングしたことあるよ
- 「え?なんでこれインターネットにつながってるの?」
(無線LAN設定してあげたときの感想) - 画像編集ってどうやってやるの?(リサイズするくらいのレベル)
60代にしては、まぁまぁのレベルかも?(ホームページも仕事で触れざるを得ないこともあったようだけど、HTMLの本をチラ見して挫折。不戦敗した苦い経験を持つ。)
ただ、人のブログは読んだこともなく、商業ホームページを巡回するようなネット生活(?)で、ブログというものを理解させるのは難しそうだと判断。
とりあえず、やりたいこと(写真と文章を公開したい)はホームページじゃなくてブログが向いてる、まずはやってみよう、と諭した上で、次のことを宿題に出した。
■ 60代の父親がブログを始めるにあたって、事前宿題
- タイトルを決めておく
- ユーザ名を決めておく
(日本語の名前と英数字のアカウント名、両方。2〜3候補挙げておく) - パスワードを決めておく
- ひとこと紹介文を考えておく(80〜140文字程度)
- ロゴ/アイコンにしたい写真or絵をピックアップしておく
- それと、ブログがどんなものかイメージを膨らませるため、
HUG Tokyoでの近藤( id:jkondo )さんのスピーチ「オープンインターネットで活動しよう」を視聴しておくこと
これだけを紙の上でも何でも良いから決めておいて。そうすれば、すぐブログ作れるから、と。初日は、なかば時間切れぎみに終了。
実際にブログを作ってみて
後日、ブログ開設のため、再び実家へ。
律儀にも宿題をこなしていた父親は「これでブログできるんだよな」とウキウキ顔。「母親の最終許可を得ながらやるぞー」(なんだその許可って笑)と、母親を呼び、たまたま居合わせた妹までなぜか出てきて、居間で4人でノートPCに向かって(村にテレビが来た!的なシチュエーションで笑)、ブログの開設作業を開始。
一応、はてなにしたのだけど、(実はExciteも検討してました。公平にサービスの質を確認する意味で!)このトップページを開いたとき、
「書き残そう、あなたの人生の物語」って、良いね。と母親。何か通ずるものがあった様子。ちょっと嬉しい。
【ブログをはじめる】をクリックした次のページ。
ブログの開設自体は実はこれだけ。
「え?もうできたの?」と拍子抜けしていた。(若干はてなブログのステマぽいくだりになってしまいましたが笑)
タイトルもデフォルトで、何の記事もない、まっさらなブログだけど、たしかに自分たちのブログができていることを実感して興奮気味な夫婦。(あえて違うPCから確認して興奮していた笑)
その後の初期設定も、事前宿題のおかげでサクサク進められた。(ここは代行した。ひとつ設定を終えるたびに、違うPCから反映状況を確認して歓喜する父親と母親。インターネットに始めて出会った少年のよう笑)
あとは、記事の書き方と、編集の仕方を簡単にレクチャー。最初の記事だけ、一緒に手伝ってひと通り見せた、つもり。その間も父親は熱心に手順をメモっていた。(もちろん手書きメモ、である。)
記事自体は、もともと母親が作品展用に作っていた作品紹介を流用。
(「ブログはじめるぞ」って目的より形ありきで始めちゃうと、「さぁ、なに書こう?」と書くネタに困ることも多いと思う。でも、ここはさすが1年間やりたいやりたいと言い続けてきただけあり、ネタの貯蔵量はかなりのものだった。)
「ブログは本じゃないから、気になったらいつでも直せる。消せる」を合い言葉にガシガシ進めていった。ここ意外と大事なポイント。
記事を公開するというと、書籍発行のイメージが強いらしく、最初から完璧でなきゃいけないというハードルを勝手に課していた。インターネットはいつでも書けて、いつでも変えたり消したりしていいんだよ、と都度つど説明すると、だんだん感覚が分かっていった様子。
で、2時間弱でブログが完成。その記念すべき初回の記事。
「おー!ブログっぽい!ブログっぽい!すてき~!」「いーね!いーね!」と、完全に自画自賛な父親と母親。
なんだかホッとした。HUGとかやってて良かった。。とかいろいろ想いが駆け巡る。
まぁ、とりあえず、これからの老後を過ごすにあたり、夫婦でやりたいことに打ち込みながらブログで社会とつながれる準備もできた。孫以外の生きがいができて何より。
ブログ開設から記事投稿までを整理すると、
■ 60代の父親がブログを始めるにあたって、開設作業
- ブログサービスはどこを使うか決める(今回は縁のあった、はてな)
- 開設と初期設定は一緒にやる(事前宿題ができてるとサクサク進む)
- 新しい記事の書き方を教える
- 記事の編集の仕方を教える
- デザインを選ぶ
- 合い言葉は「いつでも直せる。消せる。変えられる。」とりあえずでOK
- PCの画面に自分のブログが表示されることを楽しむ
最後の2つは作業ではないけれども、意外と大事なポイントだった。
(おまけ)ITの知識ってどこまで必要?と中高年世代のポテンシャル
-- 素人の素朴な疑問
記事を書いてるときは"素朴な疑問"が出てくる出てくる。
「写真の中に文字入れられないの?白抜きで。」
「写真の横に文字は入れられないの?(文章は改行した状態で)」
「なんか改行の開き具合が、行によって違うんだけど?(ワードからコピペしたせい、と思われる)」
ワードと同じ感覚で書けるよ、と【見たまま編集】機能を使っていたのだが、やはりどこかでHTMLの概念がないと超えられない壁を感じた。
「HTMLだとこうしないとダメだから、できなくはないけど難しい。」とか。「それをやるには【見たまま編集】に用意されている書式ボタンだけじゃ無理。」とか。自分には何となく分かるのだけど、親にはそれが通用しない。
また、記事の編集画面を開いた瞬間に、サブリミナル的に一瞬パッと表示されるHTMLタグ満載の画面(画面描画の段階で表示される動きをする)に、見てはいけない技術の舞台裏を垣間みてしまった感じで「あわわ…(父親)」となっていたり、あらゆるところにHTMLがつきまとう。
1年も想い続けるほどの「熱意とネタ」があったからこそ、ブログ開設までこぎつけられたようなものの、ここで「うーん、やっぱり難しいな!いいや!」とサジを投げてしまう人もいるのではないかと想像した。「ITもまだまだだな、ネットで全世界に発信できる、ということは疑いようのない奇跡的にすばらしいことだけど、それ以外の"見たままに書く、思いのままに書く"ということについては、紙のノートにも追いついていない部分もまだまだある」と思った。
HTMLも何も知らない人が、ネットで書いてネットで発信できることの、大切さを改めて感じた。いろんな経験や考え方を持ってる人をはじめ、使う側にITの知識を強要するのは、彼らにとっては「あちら側の都合」でしかないんだな、と。
このハードルがもっと下がれば、ネットにより多くの経験談や意見が増え、よりおもしろい世の中になるんじゃないか、とIT系の仕事に裏方ながら従事する者として、将来に想いを馳せた次第。
-- サービスと対価への感覚
それと、これも少し驚いたのだけど、「広告が邪魔。お母さんのステンドグラスの美観を損ねる!」とか言い出して、広告があるのはスポンサーがいて、そのおかげで無料で使えていること、有料会員になれば広告を消せることを教えた。
すると、「いくら?払う。月1,000円もしないの?安いな。」と言い放った。そして、即決済した。
さすがリタイア悠久世代。金がある。世代間格差。くそ。。と一瞬感じたけど、
"インターネット=無料"というイメージがすっかり定着している中で、"サービスには金がかかって然るべき"という感覚が残っていることの表れとも思った。
こういう人たちがもっとネットに参加してくれれば、ネットにより多くのしゅうえ(略、とIT系の仕事に裏方ながら従事するものとして、将来に希望を感じた次第。
-- ツイッターまで始めた…
ブログを開設した翌日、「お母さんがツイッターを始めたよ!」という報告があり、心底驚いた。しかも、ひとりでアカウント開設した、というから更に驚いた。「どうして始めたの?」と聞くと、「ツイッターでブログのこと書いてくれてる人がいるらしいのだけど、お返事できないのが申し訳なくて…。」とのこと。
さっそく自分のフォロワーとメンションで会話なんかしてたりして、くすぐったい気分ではあるけど、まぁ、いいや。
長年つとめた仕事も終え、趣味などやりたいことに正直になったこの世代こそ、ネットを純粋な気持ちで使い倒すことのできる第二世代なのかもしれない。
老後といっても、先はまだまだ長い。まだまだ若い。ネットという広い世界で新しいコミュニティを見つけて、これからも素敵な出会いと発見があることを願う。
*作ったブログのご紹介
母親が作ったステンドグラスを、父親が紹介していく、という何とも仲むつまじいブログとなりました(^_^) どうぞごひいきに。。
(アトリエとか言ってますが、そこ、元おれの部屋、ですから!笑)